
第十三回
2025年8月31日(日)
Participants: 3
ジェンダーロールを乗り越えようの会
「植民地支配とジェンダー」
第十三回目となる今回のジェンダーロール勉強会では、弓削尚子著『はじめての西洋ジェンダー史──家族史からグローバル・ヒストリーまで』の第七章 西洋近代のジェンダーを脱構築する ― グローバル・ヒストリー
を読みました。
大航海時代を経て進んだ植民地支配の歴史の中で、ジェンダーがどのように位置づけられてきたかについて学び、意見を交わしました。
サティと特攻隊 ―殉死と優位性について
インドにおける寡婦殉死サティについて話し合われました。夫が亡くなった際、妻が自死することを求められるサティは、当事者にとって栄誉とされる一方、外から見ると大きな違和感や暴力性があると指摘されました。ある参加者は、日本の特攻隊も同じような構造を持つのではないかと語りました。
当たり前とされる殉死は、崇高な行為とされます。しかし、女性が自ら死を選ぶ自由が奪われている点で、女性の権利が脅かされているという意見も出ました。
さらに、教育による価値観の刷り込みや支配国側が優位であるという文化の押し付けについても議論が広がりました。サティをめぐる議論では、女性の権利が焦点となる一方、西洋文化を優位として植民地に押し付ける行為そのものは、どこからが問題となるのかという問いも提示されました。
アボリジニーの子どもを親から引き離し、西洋式教育を施した植民地支配の事例も取り上げられました。特に植民地で生まれた支配国の男の子は、正しく大人になる為には祖国の教育を受ける必要があるとされ、親元を離れて祖国に戻されたといいます。では、同じ立場に置かれた女の子はどう扱われたのかという疑問も参加者の中から提示されました。
欲望・規律・ジェンダー
議論は、植民地支配における欲望と規律の関係に移りました。
まず、男性が植民地を冒険し、支配した後に、女性が入っていくという流れについて語られました。現地で先住民と恋に落ちる女性もいましたが、支配国の男性はそれを恐れ、現地男性が女性をレイプしたとして処刑する法律まで作り上げました。ここには、個人の欲望が規律として制度化されてしまう怖さがあると指摘されました。
また、スリーピング・ディクショナリーと呼ばれる、先住民女性と関係をもつことで知識を得るという行為も紹介されました。それは戦術の一部とされましたが、規律を設けて正当化される欲望の構造そのものに違和感を覚える声があがりました。規律を設けずに男性の理性は保たれないのかという問いも出されました。
さらに、白人女性が植民地に投入されることで奔放な男性の行動を抑える役割を果たしていたことも共有されました。現代において「男性は男性だけでいるとだらしなくなる」という意識が根強く残っているのではないか、という意見もあり、それもジェンダーによる偏見なのではないかと指摘されました。
政治戦略としてのジェンダー
話題は植民地問題から現代の政治へと広がりました。ジェンダーギャップ指数の低い日本では、依然として政治家の多くを男性が占めています。
その中でハニートラップという手法で女性との関係を通じて政治家の弱みを握る戦略が紹介されました。ここで参加者からは、この手法は女性政治家に対しても同じように有効なのだろうかという疑問が出されました。
ジェンダーが政治的な戦略や駆け引きに組み込まれる現実が共有されると同時に、その真偽についても問われました。
サクセスストーリーと伝統・宗教の再考
議論の最後には、伝統や宗教とジェンダーの関係について意見が交わされました。
三宅島の例では、神輿の担ぎ手となる男性が不足したため、女性も神輿を担ぐようになり、伝統そのものを絶やさない工夫がなされていると紹介されました。ジェンダー規範を再考することで、むしろ伝統が存続しているという逆転的な構造が見えてきました。
また、宗教儀式や布教絵画の中に埋め込まれたジェンダー規範についても話題が広がりました。インドでは糸を紡ぐ作業が精神修養とされ、男性が行っていましたが、西洋の視点からは糸紡ぎは女性の仕事という固定観念から違和感を持たれることがあるといいます。ある参加者は「家の外に向かって男性がミシンをかけている姿をインドで見かけて、同じように不思議に感じた」という経験を語りました。
Notes: Danshiro
References:
"A Beginner’s Guide to Western Gender History"
Written by Naoko Yuge
第七章 「西洋近代のジェンダーを脱構築する ― グローバル・ヒストリー」
This book is a valuable introduction to how gender has been constructed across Western history, offering insight into how these ideas can be deconstructed and reimagined today.
Past posts
- 植民地支配とジェンダー
- 軍事史とジェンダー
- Expanding the Range of Masculinity
- Body Image Through the Lens of Body History
- How History Shaped Our Ideas of Gender
- Gender Representation from the Perspective of Women’s History
- Exploring the Family of the Future through Family History
- Body, Feminism, and Porn
- Nation and Gender
- Choices in Labor, Sex Education, and Gender
- On Postmodern Families and Gender
- On Diversifying Families and Children's Rights
- Gender Roles in Parenting